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歴史と信仰が息づく石畳の道「滝坂の道」ハイキングレポート

2024/3/15

奈良の街から剣聖の里として知られる柳生エリアへと続く柳生街道(やぎゅうかいどう)。奈良市街から歩いた場合の前半にあたるのが「滝坂の道」と呼ばれる旧街道です。

 

春日山と高円山(たかまどやま)の間の谷川に沿って続く山道は、江戸時代に敷かれた石畳が今も残るほか、山岳仏教の信仰の対象となっていた石仏が点在しています。
豊かな自然と歴史を感じられる、人気のハイキングコースです。

 

今回は、奈良市街から円成寺までの約12kmの道のりを実際に歩いてみました。

 

※当コースは奈良市東部出張所発行の「柳生街道 散策ガイドブック」掲載のCourse01 滝坂の道を参考にしています。

 

 

 

“当日はこんな服装と持ち物で歩きました”

 

 

歩いた日(10月中旬)は最高気温23度、最低気温14度ほど。体温調節がしやすいよう、重ね着スタイルでのぞみました。
上はTシャツ+アームカバーに撥水性が高い薄手の上着、下はスポーツタイツにハーフパンツ、登山用の厚手のソックスにスニーカー、もちろん帽子もお忘れなく。
荷物は両手が空けられるリュックサックへ。軽い登山をするつもりで、歩きやすい服装をおすすめします。

 

 

必ず持っておきたいのが、紙の地図です。
スマートフォンのマップアプリはとても頼りになりますが、滝坂の道ではところどころ電波の届かない場所があります。

 

奈良市東部出張所が発行している「柳生街道 散策ガイドブック」には、分かれ道や注意すべき看板の位置が載っています。
出発前にPDFデータを印刷するか、最寄りの観光案内所で入手していただくといいでしょう。

 

飲み物は麦茶650mlを持参。気温が高い日は、ご自身の体調に合わせて水分補給の量を調整してください。
このほか、折り畳み傘、スマートフォン、充電器、首に巻く手ぬぐい、ビニール袋、携行食(チョコ菓子やビスケット)を持っていきました。

 

 

 

前置きが長くなりました。

 

さて、今回はJR・近鉄奈良駅から奈良交通バス「市内循環・外回り」などでアクセスできるバス停「破石町(わりいしちょう)」からスタートです。
「高畑(たかばたけ)」と呼ばれる春日大社の南に広がるエリアに位置しており、土塀が続く社家町の風情を感じながら街道の入口へと向かいます。

 

※街道の入り口への道はちょっと分かり辛いかもしれません。

 

バス停から東に向かって歩き、奈良市立飛鳥中学校の校門前で右手の平坦な道を進みます。
「東海自然歩道」「柳生」「滝坂の道」などの看板を手がかりに歩きましょう。
高畑の町を抜けると、木々が茂る山道になります。この頃には上着は必要なくなり、半袖Tシャツに日よけのアームカバーという出で立ちで歩きました。

 

 

能登川の渓流に沿って石畳が続きます。
さらさらと川のせせらぎを聞きながら、緑に囲まれて歩くのは爽快です。
木の実が落ちていたり、小さなカエルがピョンピョンと道を横切ったりと、豊かな自然を楽しめました。

 

江戸時代、柳生家が大名になった頃、人々が行き来しやすいようにと石畳を敷いたそう。
柳生の剣術を学ぶために、武士たちが歩いた道でもあります。「昔の人と同じ道を歩いている」としみじみ実感します。

 

 

 

水辺が近いせいか、数日雨が降っていない晴天でも石畳が濡れていることがあります。
緩やかな坂道なので、滑らないように気を付けてくださいね。

 

 

石畳の道沿いには、当時の信仰を今に伝える石仏が点在しています。

 

 

 

夕日観音は弥勒(みろく)信仰が盛んだった鎌倉時代に彫られたと言われています。
夕日に映し出されたお姿がとても幻想的なのだとか。滝坂の道沿いに看板がありますが、見上げた先の崖のような場所に彫られているため、見つけにくいかもしれません。

 

 

 

夕日観音の近くには滝坂三体地蔵菩薩磨崖仏(まがいぶつ)もいらっしゃいます。

 

 

 

夕日観音の看板から10分ほど歩くと、朝日観音が見えてきます。
東を向いた仏様が、朝日に照らされた神々しいお姿になることからこの呼び名がついたのだそうです。
すぐ下が沢というこの場所でどうやって仏様を彫ったのか、昔の人に聞いてみたくなります。

 

 

 

朝日観音から歩くことさらに5分ほど、首切り地蔵に着きました。名前のとおり、首に切れ目が入っています。
江戸時代の剣豪・荒木又右衛門(あらきまたえもん)がためし斬りをしたと伝わっています。

 

 

 

首切り地蔵の前には休憩所とトイレが整備されています。
スタートから約40分、ここでちょっと休憩です。

 

 

 

ここからは分かれ道が多くなるので、地図と看板を頼りに歩きます。
首切り地蔵付近の看板には「円成寺」の表示がなかったため、ひとまず首切り地蔵の背面にある道を歩いて「高円山ドライブウェイ」に向かうことに。

 

 

 

一旦アスファルトの道に出て右方向にしばらく歩くと、急カーブが見えてきます。
カーブが始まる付近には山道を指し示す「円成寺」の看板と山道が。見落とすところでした。危ない危ない!

 

 

 

しばらくゆるやかな上り坂を歩いていると、いつの間にか随分登ってきたことに気づきます。
ちょっと耳がツンと詰まるくらいです。

 

 

 

看板に従って歩くと、江戸時代から続いているという峠の茶屋が見えてきます。人の気配があるとホッとするものですね。

 

峠の茶屋からさらに進んだところには公衆トイレが整備されています。
コースの半分に当たる場所で、ここから先は円成寺までトイレがないので休憩しておくといいかもしれません。

 

 

 

峠の茶屋を過ぎると、のんびりとした里山の風景が広がります。
しばらくアスファルトの道を歩いて分かれ道にきたら左の道、円成寺方面へ。

 

 

 

アスファルトの道を歩いていると、右手に山道を示す看板が現れました。
見逃しやすいのでご注意ください!

 

 

 

しばらく山道が続きます。なだらかな下り道がメインで、ぬかるみや倒木もありました。ちょっとした冒険気分です。
細かい分かれ道もあるので、「円成寺」「東海自然歩道」という表示看板を探したり、地図とにらめっこしたりしながら慎重に進みます。

 

 

 

山道から石畳、車道を抜けてゴール地点の円成寺に到着しました。
平安中期の創建と言われ、国の名勝に指定されている庭園や国宝の春日堂・白山堂、重要文化財の楼門など、見どころの多いお寺です。
秋は紅葉の名所でもあります。

 

朝9時に出発し、何度か道を間違えそうになりつつ撮影や休憩もたっぷりはさんで、到着したのは正午すぎ。
歩きなれた人なら、3時間足らずでゴールできると思われます。

 

円成寺近くのお食事処で昼食を済ませ、帰りはバス(※)で奈良市街へ。
心地よい疲労に包まれて、清々しい気分でハイキングを終えました。魅力満載の滝坂の道、ぜひ皆さんもお立ち寄りください!

 

※バスは本数が少ないので帰りの時間は事前にしっかりチェックしましょう!

 

※柳生街道はまだまだ続きます!円成寺から柳生エリアへは約9km。円成寺でお昼休憩後、午後は前述のガイドブックに記載の「剣豪の道コース」を通って柳生エリアへ向かうこともできますよ。

 

※記事内の写真は2023年10月中旬に撮影されたものです。