2023/4/3
世界遺産の神社仏閣・史跡など、歴史ある観光地のイメージが強い奈良市は、実は全国屈指のお茶どころ。
豊かな水と土壌に恵まれた奈良市東部に広がる大和高原では、老舗や新進気鋭の茶農家によって、土地の個性に合ったお茶作りが行われています。「大和茶(やまとちゃ)」と呼ばれる奈良産のお茶を知り、その爽やかな香りとまろやかな旨味を味わってみませんか?
01 奈良市内ではお茶が生産されています
奈良市の東部は標高200~600メートルのゆるやかな山間地で、大和高原の北部に位置する自然豊かなエリア。7つの地区で構成され、中でも月ヶ瀬地区と田原地区は、大和茶栽培が特に盛んな地域です。
江戸時代から続く茶農家や新規就労した若手茶農家が有機・自然農法にこだわり、お茶業界内でも「良質で味が濃く、リーズナブル」と評判のお茶を作り続けています。
02 そもそも、お茶の違いって?
緑茶、紅茶、ウーロン茶などは、全て同じツバキ科の「チャノキ」の葉から作られます。茶摘み後の「発酵」の程度で緑茶や紅茶に分かれ、さらなる作業の工程で緑茶は抹茶やほうじ茶などに分類されます。大和茶の茶農家でも煎茶やかぶせ茶、紅茶などの様々な種類が作られています。
大和茶の始まり
平安初期の大同元年(806)、弘法大師空海とともに唐へ渡った高弟・堅恵(けんね)が皇帝から茶臼(ちゃうす)と茶の種を与えられて持ち帰り、佛隆寺(奈良県宇陀市)に茶園を造ったことが、大和茶栽培の始まりとされています。
お茶は仏教と深く関わりを持ち、鎌倉時代に臨済宗の僧・栄西(えいさい/ようさい)により、寺院を中心に薬としての喫茶の習慣が広がりました。
お茶の歴史に関わるスポットや伝統行事が数多く残る奈良。中でも茶の湯※に関わる2つの寺院をご紹介します。
奈良と茶の湯
鎌倉時代に茶園を持っていた西大寺では、特大茶碗を参加者同士で助け合いながら回し飲む「大茶盛式(おおちゃもりしき)」が新春と春秋(4月第2土・日曜、10月第2日曜)に行われます。
中興の祖・叡尊(えいそん)が西大寺の鎮守、八幡神社に献茶した残りを民衆に振る舞ったことに由来する、約800年続く伝統行事です。
3当時は高価な薬とされていたお茶を民衆救済のために施す意味もありました。貧富の差も敵味方もなく和み合う「一味和合(いちみわごう)」の精神を表し、鎌倉時代のお茶の飲み方を今に伝える茶儀です。
室町時代、興福寺の末寺だった称名寺の僧侶・「村田珠光(しゅこう/じゅこう)」は、「侘び茶の祖」として知られています。京都で茶と禅の精神を統一した境地(茶禅一味(ちゃぜんいちみ))に至り、侘び茶の基礎を確立。後に侘び茶(茶道)を大成し、「茶聖(ちゃせい)」と呼ばれた千利休にも影響を与えました。
奈良市が生誕の地であることにちなみ、毎年2月には市内8カ所の社寺を会場に「珠光茶会(じゅこうちゃかい)」が行われています。
※茶の湯…客を招いて抹茶を点て会席のもてなしなどをすること。茶会。
約800年の伝統を持つ「大茶盛式」で知られる
奈良時代に称徳天皇の勅願により創建された南都七大寺の1つ。鎌倉時代、真言律宗の総本山として興正菩薩叡尊上人によって復興された。特大茶碗で回し飲む宗教的茶儀「大茶盛式」で知られる。
📍奈良市西大寺芝町1丁目1-5
☎0742-45-4700
🕐8:30~16:30
料金:三堂共通拝観(本堂・四王堂・愛染堂)一般800円、中・高600円、小学生400円
春の大茶盛式(拝服料1人3,000円 事前予約制)
🅿あり
侘び茶の祖にゆかりの寺
今日に至る茶の湯の基礎を確立した「侘び茶の祖」、村田珠光ゆかりの寺。江戸時代に焼失し、本堂と茶室「独盧庵(どくろあん)」(通称:珠光庵)が再興された。命日の5月15日に「珠光忌」が行われ、この日のみ、本堂と茶室の特別拝観が可能。
📍奈良市菖蒲池町7
☎0742-23-4438
🕐本堂・茶室は5月15日のみ拝観可
(10:00~15:00)※コロナ禍のため要確認
料金:一般1,500円
🅿あり
おいしい緑茶の淹れ方
ペットボトルの普及でお茶を簡単に飲める時代ですが、自分で淹れるお茶もおいしく簡単に楽しめます。
※茶葉によって最適な淹れ方は多少異なります。
水出しで爽やかに
❶ ボトルに茶葉を入れます(ボトル1リットルで大さじ2~4杯)。
❷ ボトルに水を注ぎます。
❸ 冷蔵庫に入れて30分~2時間じっくりと抽出。
❹ 旨味が下に沈澱するため、飲むときは軽くボトルを振ってグラスに注ぎましょう。軟水で3~6時間じっくりと抽出。時間をかけすぎると逆に苦味が出ることも。
Point!!
軟水で3~6時間じっくりと抽出。時間をかけすぎると逆に苦味が出ることも。
ティーバッグで手軽に
❶ 沸騰したお湯を茶碗に注ぎます。
❷ 急須にティースプーン1杯(一人分)の茶葉を入れます。
❸ 茶碗のお湯を急須に注ぎます(お湯はお茶に最適な温度になっています)。
❹ 20~30秒待ってから、残さず茶碗に注ぎます。
Point!!
お湯の温度は、玉露やかぶせ茶なら50~60℃、煎茶なら80~90℃、ほうじ茶なら熱湯(90~100℃)。
急須で本格的に
❶ お湯の温度は熱湯ではなく少し冷まして(約80℃)。
❷ティーバッグに直接かけず、静かにお湯を注ぎます。
❸ 20秒ほどフタをする。
❹ 適度な濃さになったらティーバッグは取り出します。
Point!!
お湯を注いだ後は、ティーバッグを何度も振らない、決してつぶさない(雑味が出てしまうため)。
※当記事は観光情報誌『ならり』vol.34からの抜粋です。掲載内容は2023年3月現在のものです。