奈良の食べ歩きは近鉄奈良駅周辺だけじゃない!?レトロな穴場・船橋通り商店街さんぽ
1969年までは近くに近鉄奈良線・油阪駅があり、多くの⼈でにぎわっていた船橋通り商店街。⽯畳の道や昔ながらの建物が、今も静かにその時代の⾯影を伝えています。通勤・観光客などが行き交う近鉄奈良駅周辺とはまた違い、この⼀⾓ではのんびりとした時間の流れが感じられるはず。
昔ながらのパン屋さんやレトロな建物を活かしたカフェ、⼩さな本屋さんやおむすび屋さんなど新しいお店も街並みにやさしく溶け込んでいます。今、静かな「奈良の⽳場」として、ゆっくりと注⽬を集めているこのエリアを、奈良で活躍する編集者、徳永祐⺒⼦さんがご案内します。
INDEX
案内する人
1977年、奈良⽣まれ。17年間、奈良のタウン情報誌の編集に携わり、その後「まち・ひと・ことを編む」をコンセプトにフリー編集者として、まちづくりや奈良の魅⼒を発信し続けている。
⻑い歴史とこれからの未来の中で、「今を楽しむ」ことに全⼒を注ぐ。奈良の空が好き。奈良のトビラ合同会社代表社員。NPO法⼈奈良好き⼈のつどい理事⻑。
JR・近鉄奈良駅から徒歩約5分という便利な立地ながら、観光のメインルートから少し外れているため、歩いている人も近隣の大学の学生さんやご近所さんが多い、落ち着いた地元密着型商店街です。
けれど実は、ここ数年で個性的なお店が続々と誕生し、じわじわと注目を集めているエリアなんです。昭和の趣を残しながら、古さと新しさがほどよく混ざり合う、どこか懐かしくて居心地のいい通り。
今回は、そんな船橋通り商店街の中でも、教えたいような、でも秘密にしておきたいようなーーたくさんの魅力が詰まった5つのお店をご紹介します。旅の途中にぜひ立ち寄ってみてください。
船橋通り商店街周辺マップ
船橋通り商店街の南口からスタート！
- 徳永さん
- まずはこちら。2023年にオープンしたおむすび屋さん。ここ数年で奈良市内におむすび屋さんが増えましたし、実家（奈良市都祁〈つげ〉地域）でお米づくりをしている私としては気になっていたお店です。
おむすび処 和が家
おむすびへの愛が止まらない！
ここは、かつて小料理屋だった店舗。てっきり「お母ちゃん風」の店主を想像していたら、迎えてくれたのはなんと23歳の女性店主でした。起業したのは保育士を目指して大学に通っていた4年生の頃。小さな子どもは普通の白米より「おむすび」にすると食べてくれることを実習を通して知り、「小さなお子様連れのお母さんにも安心してくつろいでもらいたい」と、カウンターと掘りごたつの個室があるこの場所で開業しました。
まずはシンプルなこだわり塩むすびから。お米の甘味がしっかりあって、海苔の歯切れの良さが抜群。これ、傑作です。それもそのはず、こだわりがすごい。お米は全国津々浦々食べ歩き、北海道産「ゆめぴりか」を採用。
おむすびのサイズ、握り方、塩加減、海苔は産地や等級はもちろんですが、何より驚いたのは、海苔のサイズ。ごはんの量に対して1mm単位にまでこだわっていました。
具材入りは、中にも上にもたっぷりと。どこから食べてもお米・具材・海苔が一度に楽しめるバランス。とにかく店主のおむすびへの愛が止まりません。
基本的にはセットメニューの注文です（写真は温かい握りたてのおむすびに、お味噌汁はもちろん、注文を受けてから焼くだし巻きに、小鉢2種がつく一汁三菜セット）。単品の追加注文も可能。
なんと1度に最高16個たいらげたお客さんもいるそう。私の胃袋では一度に無理なので、これはもう通うしかありません。
ここで知り得た情報をさっそく誰かに伝えたい！記事を仕上げている今も、また行きたくなってきました。
住所
奈良市芝辻町11-43 シティホームズ奈良1F
電話
070-9153-8377
時間
9:00〜15:00（LO14:30） 売り切れ次第終了
休み
水〜金曜（祝日営業あり）
席
カウンター6席、掘りごたつ1室
駐車場
駐車場なし
公式Instagram
- 徳永さん
- 続いては、2025年でオープンして3年目を迎える小さな本屋「ほんの入り口」。店名を聞いただけでワクワク！「どんな世界、どんな一冊と出会えるんだろう」と期待がふくらみます。
ほんの入り口
新しい世界と出会える本屋
店主は、長年大型書店で本と向き合ってきた元書店員。ここではレジの向こうで黙々と作業するのではなく、お客様とのおしゃべりを楽しむ姿が印象的です。
棚に並ぶ本は、まるで曲を編むようにセレクトされ、時にはお客様の声で「チューニング」されていきます。置きたい本はブレずに、でも枠にとらわれず、お客様のおすすめも取り入れてみる柔軟さは、まさに地元密着型。
絵本、新書、写真集、エッセイ……ジャンルは幅広く、表紙を見ているだけでも楽しい。ときに、マニアックな本がそっと棚に潜んでいるのも面白いところ。それを手に取るお客様がいるから、この本棚は生きているのだと感じます。
さらに魅力的なのは「参加型」ということ。読書会や講座、音楽を組み合わせた企画など、イベントは週に2〜3回。月末には絵本音読会も開かれます。
お客様との会話から次々と新しい企画が生まれていくそう。いろんな世界だけでなく、いろんな人との出会いが生まれる場所でもあるのですね。
「本屋って宝探しみたいなものなんです。そんな気持ちでふらっと来てもらえたら」と店主。本を入り口に、あなたの「好き」を見つけに行ってみませんか？
住所
奈良市奈良市船橋町1
電話
0742-42-8356
時間
11:00〜18:00
休み
火曜（不定休）
駐車場
駐車場なし
公式ウェブサイト
公式Instagram
- 徳永さん
- 「ここ、薬局でしょ？」ーーそう思って足を止めたら、ふわっと漂う甘くやさしい香り。近くの人気店「CAFE & RESTAURANT POOL」の姉妹店として2022年にオープンしたスイーツの楽園です。
Cafe & Bake Allons Bien（アロンビアン）
レトロ空間でパワーチャージ！
かつて薬局を営んでいたご年配夫婦がここを手放そうとした時に、ヴィンテージをこよなく愛するオーナーが「古いものはもう作れない」という想いで譲り受けた場所。
POOLでのランチ後に「もう少しおしゃべりしたい」という人や、遅めのブランチを楽しむ人たちが、レトロな世界観へと引き込まれ次々にやってきます。
ショーケースには、季節の果物を贅沢に使ったケーキやタルトがずらり！朝一番にオーナーが市場で仕入れてきた果物を、パティシエが糖度や香りを吟味して最高の状態で仕立てます。
定番のシュークリームは、サクサクの皮に注文後クリームをたっぷり！どのスイーツも甘さを控えめにしているから、ボリューム満点でも不思議とペロリと食べられてしまうのです。
お気に入りを手に2階へ上がれば、カラフルなアンティーク家具とアートに囲まれたカフェ空間が広がります。
常連さんの中には、席を移動しながら楽しむ人もいるそう。学生の笑い声や、ひとり静かに過ごす午後……自由な時間が流れています。
古きを生かしながら新しい風を吹き込む「アロンビアン」。船橋通り商店街の日常に溶け込みながら、訪れる人に元気を与えてくれるお店のひとつです。
こうした個性的なお店に出会えるところが、奈良の魅力ですね。心もお腹もチャージ満タンです！
住所
奈良県奈良市船橋町5
電話
070‑3891‑1022
時間
12:00〜17:00（ブランチメニュー12:00〜14:00）
休み
火・水曜
席
30席（要確認）
駐車場
4台
公式Instagram
- 徳永さん
- 1932（昭和7）年の創業から、時を重ねて九十余年。ベーカリーフジタは、商店街の中でもひときわ長く暖簾を守り続け、まるでこの通りの記憶そのもののような存在です。
ベーカリーフジタ
昭和時代にタイムスリップ
ガラス越しに並ぶパンに誘われて扉を開ければ、一気に昭和にタイムスリップ。
パンはもちろんですが、レジ奥の壁にかかる黒電話にまず心を鷲掴みされてしまいました。油阪駅があった時代から続く時の流れをそっと語りかけてくれるかのようです。
3代目の店主は30年にわたり店に立ち、先代と20年を共にしながらその味を受け継ぎました。
流行のハード系ではなく、やわらかく親しみやすい味わいのパンや焼き菓子およそ25種。
中でも人気は、りんごのシロップ漬けをくるりと巻いた「アップル」。チョコレートでコーティングした個性的なメロンパンもファンが絶えません。
価格は、少しずつ値上げしているということですが、120円〜180円と良心的……いやいや、安すぎませんか？長年の企業努力に敬服。パッケージも変わらず、昭和レトロ感が逆に新鮮です。
「知っている店が次々と閉まってしまって、寂しい。新しいお店がもっと増えてくれたらいいですね」と店主。
まだまだ頑張ってほしいと伝えると「とりあえず100年くらいは…」と冗談めかしながらも力強い言葉を残してくれました。
時代が変わっても、これまでの街の記憶と味はいつまでも変わらないでほしいです。
住所
奈良市船橋町55-4
電話
0742-22-3824
時間
8:00〜20:00（土・日曜は～17:00）
休み
不定休
駐車場
駐車場なし
＼「下長慶橋」が見えてきたら、商店街の終点です／
大仏鉄道記念公園がゴールです！
ゴールは「大仏鉄道記念公園」。明治時代の鉄道会社「関西（かんせい）鉄道」の加茂と奈良を最短距離で結んだ大仏鉄道。
約10キロの路線で、わずか9年で廃線になった「幻の鉄道」といわれ、かつての鉄道の歴史を感じられますよ。
約800mの商店街を歩いてきましたが、気になるお店はありましたか？ほかにも魅力的なお店がありますので、ぜひ散策を楽しんでくださいね。
- 徳永さん
- 商店街散策はここでひと区切りですが、もう1軒、穴場のお店を見つけちゃいました。もう少しだけお付き合いください。川沿いの細い路地へ、レッツゴー！
Book Cafe 川べり
時間よ止まれ。長居したくなる穴場店
壁一面に並ぶ本、木の温もり、そして紙の香り……扉を開けた瞬間から、またまた本に酔いしれる時間。天気の良い日にはテラスの窓が開かれ、佐保川のせせらぎがそっと耳に届きます。
BGMは流れる水の音のみ。ただただ静かな時間が流れています。
2025年4月にオープンしたこちらのブックカフェを運営するのは、奈良で20年、専門書を世に送り出してきた「萌（きざす）書房」。
編集者が手がける選書は、哲学書から漫画まで幅広く、時には時代の話題や地域の催しに寄り添ったフェアも開かれます。
それぞれのジャンルに「見本」と書かれた漫画が用意されているところがユニークです。入門書と専門書の間を埋める「ちょうどいい一冊」や、大型書店ではなかなか出会えない個性的な本が並びます。
奥のカフェスペースでは、持参した本を開くことも、棚の「見本」から気になる一冊を手に取ることもできます。
メニューはコーヒーや自家製ジンジャーエール、クラフトビールなどのドリンクから、日替わりケーキやトーストといった食事が揃っているので、カフェだけの利用にもおすすめです。
テラスの向こうに流れる佐保川には、ときどき鹿が水遊びに訪れることもあるそう。鹿もよくわかっているのでしょうね、川面をぼんやり眺めるだけの何もしない過ごし方がここにあるってことを。
住所
奈良市法蓮町1050-1
電話
0742-42-6986
時間
10:30〜18:00（金土は~20:00まで）
休み
月曜（祝日の場合は翌火曜休）
席
15席
駐車場
駐車場なし
公式Instagram
（撮影：都甲ユウタ テキスト：徳永祐巳子）
※掲載の情報は2025年8月時点のものです。詳細は各施設・店舗にお問い合わせください ※写真はすべてイメージです
船橋通り商店街のスポット情報
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