仏像拝観時に役立つ豆知識
仏像に向き合うとき、事前に少し知識を持っていると、その姿や表情の意味合いをより深く感じることができます。たとえば「如来・菩薩・明王・天」といった種類の違いや、多様な工法を知ることで、同じ仏像でも新たな発見が生まれるかもしれません。
このページでは、仏像拝観の際に役立つ基礎的な情報をまとめるとともに、長年奈良で観光ガイドを務める友松さんのインタビューを紹介します。
奈良を訪れて仏像と出会うひとときが、より豊かで印象深い体験となるよう、ぜひ参考にしてください。
仏像の種類と特徴
仏像には大きく分けて4つの階層※1があり、位が高い順から「如来」「菩薩」「明王」「天(天部)」となります。
最高位の「如来」には、釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、奈良の大仏さまで知られる盧舎那仏(るしゃなぶつ)などがあります。
※1=「羅漢・高僧(らかん・こうそう)」を加えて5階層とされる場合もある
如来(にょらい)
悟りを開いた釈迦(=仏陀)がモデル。悟りの証と定義された「三十二相※2」などの特徴を備える。
頭部の肉髻(にっけい)や螺髪(らほつ)、眉間の白毫(びゃくごう)などの特徴がある。
※2=仏さまが備えている32の優れた身体的特徴のこと
菩薩(ぼさつ)
悟りを開く前の釈迦がモデル。
様々な装飾品で身を飾り、華やかな印象。
有名な観音菩薩は衆生(しゅじょう)の苦しみを救うため、33の姿に変身すると説かれている。
明王(みょうおう)
密教において仏法を守護し、如来や菩薩では救済し難い人々を、忿怒(ふんぬ)の形相で救済。
大日如来の化身とされる。
天(てん)
古代インドなど異教の神々が仏教に取り入れられ、仏法を守護する存在となったもの。
四天王や十二神将などが含まれる。
仏像の素材と工法
仏像の素材や工法は、時代とともに、金銅仏や塑像、乾漆像、木彫仏(一木造、寄木造)など、様々な変遷を経てきました。
その違いや特徴を知ることで、仏像への理解がより一層深まります。
※この他に石仏(磨崖(まがい)仏・石窟仏を含む)などもある
金銅仏
6世紀に大陸から伝わった仏像の多くは金銅仏。銅などの金属を鋳造し、鍍金(ときん)が施されていた。平安時代後期には、体や手のパーツを別々に鋳造した後、接合されることもあった。
塑像(そぞう)
芯となる木材に粘土を盛りつける工法で、細かな細工が施された。もろく崩れやすかったため、現存する塑像は極めて貴重といえる。飛鳥時代後期から奈良時代に多く用いられた。
乾漆像(かんしつぞう)
木芯に粘土を盛りつけた仏像の原型の上に、麻布を漆(うるし)で貼り、重ねて乾かす。費用も時間もかかるぜい沢な製法で、主に奈良時代に用いられた。脱活(だっかつ)乾漆像と木心(もくしん)乾漆像がある。
木彫仏
木像の仏像が造られるようになった飛鳥時代は樟(くす)が、平安時代初期までは榧(かや)や檜(ひのき)が主に使われた。寄木造は日本で編み出された工法で、平安時代後期から今に至るまで主流となっている。
友松洋之子さんに聞きました
奈良の仏像巡りとマナー
Nara観光コンシェルジュとして観光ツアーのガイドを務める友松さんは、自他ともに認める大の仏像好き。
日々仏さまと観光客に寄り添う友松さんに、奈良の仏像巡りの魅力とマナーを教えてもらいました。
Profile
友松 洋之子(ともまつ よしこ)
奈良市在住。NPO 法人奈良まほろばソムリエの会所属。
第1回Nara 観光コンシェルジュアワード最優秀賞受賞。
講師やガイドとして奈良の魅力を発信している。
※当記事は観光情報誌『ならり』vol.39からの抜粋です。掲載内容は2025年8月現在のものです
特集仏像 その他の記事
観光情報誌「ならり」バックナンバー・デジタル版
- 奈良の観光情報誌「ならり」
- バックナンバー・デジタル版はこちらからご覧ください。

- もっと見る




























秘仏など常時拝観ができない仏像も少なくないので、秘仏開帳の情報にアンテナを張ることや、予約が必要かどうかの確認もお忘れなく(秋冬期の秘仏特別公開情報はP17 参照)。
仏像拝観の際は「脱帽と合掌礼拝、信仰の対象であることを忘れない」ことが大切です。
お寺やまわりの方への配慮を忘れずに、本堂や諸堂の厳かな雰囲気も味わいながら、歴史ある奈良の仏像巡りを楽しんでくださいね。
に思いますね。
そのほか、亀井勝一郎の名著『大和古寺風物誌』(1953年初版、新潮文庫)などに表現された美しい文章を参考に、紹介されているお寺や仏像を巡るのも、その情景を心に留め置く手法として素敵なことだと思います。
ている創建当時の化仏(けぶつ)※1を探してみると楽しいですよ。
あと平安時代の仏像も魅力的で、衣文(えもん)※2 の表現やお顔の表情など、個性的な仏像が多いところが面白いです。最近は、2025年に光背の修復が終わり、美しく復元された光背の前に鎮座されている喜光寺の本尊・阿弥陀如来坐像(写真)の満足そうなお顔に癒やされています。
※1=仏が衆生(この世に生きているすべてのもの)を救うために姿を変えて現れること。仏像の頭部や光背に配置される小型の仏像
※2=仏像の衣類や装束に表れているしわのこと