奈良の日本酒・酒蔵見学を帯解で!清酒発祥の地で味わう五感体験
奈良は清酒発祥の地。2013年に「和食」が、2024年には「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。これを機に、日本酒への注目が世界的に高まり、奈良県が“清酒発祥の地”として、あらためて脚光を浴びたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。
現在(2026年8月)、奈良県内には27の酒蔵があり、それぞれが伝統を守りながら酒造りに取り組んでいます。さて、今回ご紹介するのは、帯解エリアに蔵を構える「奈良豊澤酒造」。代表銘柄「豊祝(ほうしゅく)」で知られる、奈良を代表する名蔵です。 5代目の豊澤孝彦(とよさわ たかひこ)さんにお話をうかがいながら、同蔵ならではの「こだわりの酒蔵見学」の魅力をお届けします。
「蔵を開く」想い
奈良豊澤酒造は、1868(明治元)年創業。160年近い歴史を誇る奈良の老舗酒蔵です。昭和の時代、「これからは量より“良い酒”が求められる時代になる」と見据え、本当に喜ばれる純米酒造りへと舵を切りました。
そして今、“量より質”、さらには“個性”が求められる時代へ。奈良豊澤酒造では、麹造りや自家製酵母など、酒造りの要となる部分を大切に守りながら、変わらず手造りにこだわり続けています。その一方で、「お客様目線の酒造り」を掲げ、消費者向けの「豊祝会」を開催したり、直営店で日本酒を楽しめる環境を整えたりと、ファンづくりにも力を注いでいます。
中でも大切にしているのが、“蔵開き”という姿勢。「酒造りをもっと身近に感じてもらえるよう、蔵見学を継続しています」と5代目の豊澤孝彦さん。見学は酒造りのシーズン中に予約制で開催。1名から最大40名まで参加可能で、時間帯や季節によって見られる工程が異なるため、リピーターも多いそうです。
五感で味わう蔵見学
まずは奈良が“清酒発祥の地”と呼ばれる歴史や、奈良豊澤酒造の酒造りについてのお話をじっくりと聞きます。そして、いよいよ蔵の中へ。日頃から酒造りに関わるスタッフの城使(じょうし)さんに案内していただきました。酒造りの写真とともにご紹介します。
最初に酒米をきれいに洗う「洗米」や下ごしらえとして米を水につけておく「浸漬(しんせき)」の工程を経て行われる「蒸米」の工程を見学します。大量に仕込むために使われる大型の「連続蒸米機」で、均一に酒米が蒸されていきます。午前中の見学の場合、蒸した酒米の香りがふわりと立ち込め、蒸し上がった熱々のお米を実際に触らせてもらえることも。
いよいよ、酒造りの心臓部となる麹室(こうじむろ)へ。残念ながら中に入ることはできませんが、タイミングによっては、麹菌をまとった蒸米を見られるかも。室の中では、蒸し上がった米を広げ、丁寧にほぐしながら麹菌をなじませる作業が行われています。高温の中で行われる、体力勝負の作業です。
最後は仕込蔵へ。大きなタンクが床に埋め込まれている様子は圧巻。蔵の中では「もろみ」と呼ばれる日本酒の元が発酵しています。酵母の“プチプチ”という音に耳を澄ませたり、蔵いっぱいに広がるお酒の香りに包まれたりーーまさに五感で味わう酒造りの世界を体験できます。
実際の作業では、タンクで「もろみ」を発酵させる前に、「酒母(しゅぼ)」を造るという重要な工程があります。酒母とは、お酒造りに適した優秀な「酵母」だけを大量かつ丈夫に育てるための“スターター”のこと。これをもとに「もろみ」の発酵を安定・促進させるのです。酒母は、別名「酛(もと)」とも呼ばれ、文字通り「お酒の元」です。酒造りの要を表現した「一麹、二酛、三造り」の「二酛」にあたり、麹造りに並ぶ、酒の出来を左右するもの。今回は見学できませんでしたが、知れば知るほど発酵の世界の奥深さを感じます。
見学後は、奈良豊澤酒造の様々なお酒を利き酒体験できます。タイミングが良ければ、搾りたてのお酒を味わえる日もあるそう。職人さんたちの熱気を肌で感じたあとに飲む酒は、格別の美味しさでしょう。
見学の後はショップでお土産選び
見学後は、蔵に隣接するショップへ。店内には豊祝シリーズがずらりと並びます。冷蔵庫には、火入れと呼ばれる低温加熱殺菌を行っていない「生酒」の姿も。搾り機からダイレクトに瓶詰めされたショップ限定商品ですので、蔵見学の特別なお土産に最適です。春は爽やかでフレッシュな味わい、夏を越えるとまろやかさが増します。秋には「ひやおろし」、冬から春にかけては寒造りの新酒ーー季節ごとに違う味わいに出会えるのも、日本酒の大きな魅力です。
そして、おすすめの1本もご紹介します。奈良県生まれ、奈良県育ちの酒米「奈々露(ななつゆ)※」を使った純米酒です。「奈々露」の開発は2014年にスタート。10年以上かけて生み出された奈良初のオリジナル酒米です。長らく県独自の酒米がなかった奈良にとって、大きな挑戦でもありました。2025年には奈良県内にある16の酒蔵が、この酒米を使った新酒を発表しました。研究に携わってこられた豊澤さんにとっても、思い入れの深い1本。地域性のある商品が共感を呼ぶ今の時代にぴったり。すっきりとした飲み口で、食中酒としてもおすすめです。
※正式名称は「なら酒 1504」(愛称「奈々露」)
日本酒を、もっと身近に
お酒造りの魅力を感じたあとは、おいしいお酒をもっと味わいたくなるかもしれません。「家まで待ちきれない」という方は、奈良や大阪の駅近・駅ナカにある直営店や姉妹店へ。蔵見学から“飲む楽しみ”までつながる動線も魅力的です。
「今はどこの蔵も美味しいお酒を造るのが当たり前。でも、こだわりは押し付けるものではなく、共感していただくものだと思っています」と5代目の豊澤孝彦さん。酒蔵見学にも力を入れる豊澤さんは、若者の日本酒離れが話題になる一方で、「どう楽しんでもらうか」を提案することで、日本酒のファンはもっと増やせるはずだと考えています。リーズナブルに本格的な日本酒を楽しめる環境づくりに、奈良豊澤酒造ならではのおもてなしの心を感じられます。
- |奈良豊澤酒造|
- 住所
- 奈良市今市町405
- 電話
- 0742-61-7636
- 時間
- 8:00〜17:00(ショップ)
- 休み
- 土日祝日
- 駐車場
- 2台
- 蔵見学のご案内 開催時期: 10月~11月、2月~3月のみ
開催曜日: 期間中の毎週水曜日・土曜日
開始時間: 10:30〜 / 15:30〜(1日2回)
所要時間: 60~90分程度
料金: 1名あたり500円(お土産付き)
定員: 1〜40名
予約: 完全予約制(※お電話でお問い合わせください)
酒の香りに包まれながら、奈良の酒文化を身近に感じることができる至福の時間でした。酒造りへの思いや職人さんたちの真摯な取り組みに触れることで、一杯のお酒の味わいも少し違って感じられるかもしれません。ぜひ、開かれた蔵へ足を運んでみてください。
案内してくれた人
徳永 祐巳子(とくなが・ゆみこ)編集者/amu
(撮影:都甲ユウタ テキスト:徳永祐巳子)
※掲載の情報は2026年8月時点のものです。詳細は各施設・店舗にお問い合わせください
※掲載価格はすべて税込みです
※写真はすべてイメージです
この記事で紹介した豊澤酒蔵の場所
- 奈良豊澤酒造
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