奈良の編集者が紹介する
奈良の穴場!?暮らしに根付く地元密着のおすすめローカル散策ガイド
奈良の難読地名の一つ、「京終(きょうばて)」。奈良時代の都・平城京の“終(はて)”に位置することから、その名が付いたといわれています。今では、奈良町の南の玄関口として暮らす人や観光客が行き交っているJR京終駅。1898(明治31)年に開業し、大正時代にはこの地から東の南田原、さらに小倉へと続く大和高原を結ぶ貨物専用のロープウェイ(奈良安全索道)が運行され、物流の拠点として賑わっていました。時代は移り、2019年に開業当時の木造平屋建て駅舎が復元され、新たな地域の交流施設として生まれ変わりました。
京終エリアは、近年ゲストハウスや新しい店舗も増えていますが、今も変わらず暮らしの中に息づく風景があります。
今回は、京終のまちに根を下ろし、日々の営みを紡いできた醤油蔵や銭湯、お店をご紹介します。地域の人たちに愛され、家族で受け継がれてきた“生業”。そんな仕事の風景を訪ねました。
INDEX
井上本店(イゲタ醤油醸造元)
京終の味と匂いを、お土産に
JR京終駅からまっすぐ北へ歩くと、ふんわりと香ばしい発酵の香りに誘われます。ここは、「イゲタ醤油」の醸造元である井上本店です。通り沿いにはお買い物ができる店舗もあります。
1864(元治元)年創業当時は、興福寺南側の猿沢池の近くで商いをしていましたが、物流を支える氷会社の氷室(貯氷庫)として大正時代末期に建てられたレンガ造りの建物を買い取り、1945(昭和20)年頃からここ京終で醤油づくりを続けています。
「ここの醤油は本当においしい!」と地元民の間でも口コミで評判の京終の味です。そのおいしさを支えているのが、「微生物の邪魔をしない」醤油づくりです。化学的な製造方法で大量生産が主流となっていた昭和40年代、先代は「昔ながらの造り方が、本来のおいしさではないか」と丸大豆醤油を再び造り始めました。その先見性が、今の井上本店の醤油造りにつながっています。
6代目の吉川修さんは、5代目の娘さんとの結婚の後に醤油蔵を継ぎました。今では二人の息子さんも家業に加わり、コンクリートタンクでの仕込みに加えて、2021年からは「木桶仕込み」にも取り組んでいます。先代から受け継いだものを守りながら、家族とともに昔ながらの醤油造りを継承されています。
「毎日うちの醤油を使った料理を食べていたら、味覚が変わりましたよ」そう話す表情からも、日々の食の大切さが伝わってきます。毎日使う醤油だからこそ、その違いが食卓に表れるのかもしれません。食べるものが体をつくるーーそんな言葉を改めて実感させてくれる存在です。
お店には、濃口、淡口、濃厚、つゆ、ポン酢など、さまざまな種類が並びます。ぜひ、ご自宅でも京終の味を楽しんでみませんか。
- |井上本店(イゲタ醤油醸造元)|
- 住所
- 奈良市北京終町57
- 電話
- 0742-22-2501
- 時間
- 9:00〜17:00
- 休み
- 土日祝(10月〜3月は土曜も営業)
- 駐車場
- 2台
- 見学のご案内
井上本店では製造工程や赤レンガ倉庫などの見学を通年(ただし、繁忙期には対応できない日あり)で受付けています。
開催時期:通年(ただし、繁忙期には対応できない日あり)
所要時間:45分/90分
定員:1〜15名
料金:1名あたり45分1,500円/90分3,000円(※8名以上で割引あり)
予約:完全予約制(※お電話でお問い合わせください0742-22-2501)
山田たこ焼き店
ソースの匂いに包まれた憩いの場
ソースのいい匂いに誘われてやってきたのは、山田たこ焼き店。「いいんですか?」と思わずメニューを二度見してしまいます。もちもち食感のたこ焼きをはじめ、焼きそばやお好み焼き(プラス100円でモダン焼きもおすすめ)、どれも驚くほど良心的な価格です。たこ焼きとお好み焼きを注文しても1,000円でお釣りがくるのですから、「庶民の味方」とはまさにこのこと。
ここに嫁いで50余年という山田サチ子さん。たこ焼き店を始めたのは20年以上前、この周辺の賑わいが少しずつ減ってきた頃だったそうです。数年前に足が不自由になり、お店を閉めようと思ったこともあったそうですが、「この店がなくなると困る」というお客様の声に背中を押され、現在は、孫の翔太さんが祖母のサチ子さんから受け継いだ味を守りながら、二人三脚で店を切り盛りしています。「いらっしゃい」そう声をかけてくれるお二人の笑顔に、なんだかほっとします。
取材中も「ここのたこ焼き、おいしいやろ?」「昔はここで野菜も売ってたんやで」と、ご近所の常連さんが自然と会話に加わります。2日に1回来ているというお客様もいて、みなさん、サチ子さんや翔太さんとの会話を楽しんでいる様子。店の中には、どこか家族のような温かな空気が流れていました。
地域の人たちの憩いの場所として愛され続けるお店ですが、もちろん、初めての方もあたたかく迎え入れてくれます。お急ぎの場合は、電話で取りにいく時間と数を注文するのがベストです。これからも変わらない味を求めて、人が集い、おしゃべりに花が咲くでしょう。
- |山田たこ焼き店|
- 住所
- 奈良市京終町27
- 電話
- 0742-24-3348
- 時間
- 11:00〜17:00
- 休み
- 月曜
- 駐車場
- 無し
ベーカリーショップ アンデス
家族の想いを守り続けるパン屋さん
JR京終駅から東へ歩いて約6分。「生地がおいしい」と評判のベーカリーショップ「アンデス」。地元の方だけでなく遠方から買いに訪れるお客様も多く、焼き数に限りはありますが、常時約50種類のパンが並びます。
脱サラ後、パン屋やフランスパン教室で修業を重ねる中で出会った松本ご夫妻が、1990年にパン屋を始めました。「素人が始めたパン屋やったからね」そう振り返る奥様。地域の人たちに支えられながら、一歩ずつ歩んできました。現在は、息子さんと3人で切り盛り。料理人として経験を積んだ息子さんは、惣菜パンや新商品の開発を担う頼もしい存在です。無理なく続けていける営業スタイルを大切にしているため、開店時間は12時からと少しゆっくりめ。「今の味を守りながら、長く続けていきたい」そんな言葉にも、この店らしさが表れています。
開店当初から、素材へのこだわりは大切に守り続けています。何といっても生地のおいしさが評判で、開店当初から変わらない人気の食パンはもちろん、ソフトフランスもファンの多い看板商品です。2日かけてじっくり寝かせた生地は、もっちりとした食感と豊かな風味が魅力。トングで持ち上げると、そのずっしりとした重みからおいしさが伝わってきます。
ご先祖さまへの感謝、お客様への感謝、そして地域への感謝。そんな想いを胸に、今日も一つひとつ丁寧にパンを焼き続けています。
- |ベーカリーショップ アンデス|
- 住所
- 奈良市紀寺町400-9
- 電話
- 0742-27-6595
- 時間
- 12:00〜18:00
- 休み
- 日・月・火
- 駐車場
- 6台
ローカルな旅には欠かせない!
奈良市に残る貴重な銭湯 今日も暖簾の先に、京終の湯
地元の顔が集まる場所といえば、銭湯。奈良市内には、ならまちに1軒、京終に2軒のまちの銭湯が残っています。まち歩きの途中でも気軽に立ち寄れるよう、手ぶらセットを購入できるのもうれしいポイントです。開店を待ちわびる常連さんたち。湯上がりには、自然と笑顔になるーー。今回は、京終の二つの湯をご紹介します。
朝日温泉
高濃度炭酸泉が皮膚に浸透!
朝日温泉の目玉は「高濃度炭酸泉」。浸かるとお肌に細かな泡がぷくぷくと付く楽しさはもちろんですが、ぬるめのお湯に浸かることで、体の芯まで温めてくれるので、私も大好きなお風呂です。熱いお湯が苦手な方におすすめです。
創業は1959年。現在は2代目の山崎美隆さんが息子の暁史さんとともに切り盛りしています。改装の際、集客の目玉として導入したのが高濃度炭酸泉でした。山崎さんにとっては暮らしの一部になっている生業。そして地域の人たちにとっては、一日の疲れを癒す大切な場所です。
「元気なうちはがんばります」そう話す山崎さん。大晦日も通常営業。正月は1日と3日がお休みで、2日は朝8時から12時まで営業しています。大晦日は特に大忙し。家族そろって一年の垢を落としに来る人も多く、年の瀬ならではの賑わいに包まれるそうです。50年以上変わらない営業を続けるのは大変ではありませんかーーそう尋ねると、「私にとっては、いつものことやから」と笑います。家業と暮らしが隣り合わせにあるからこそ、朝日温泉は今日も変わらず地域の人たちを迎えています。
- |朝日温泉|
- 住所
- 奈良市京終地方東側町20
- 電話
- 0742-22-0532
- 時間
- 14:00〜0:00
- 休み
- 水曜
- 駐車場
- 第一駐車場15台 第二駐車場5台
ほてい湯
お肌喜ぶ人工温泉と高純度軟水
細い路地の一角にあるほてい湯。3代目の西村宏さんを中心に、家族で切り盛りするまちの銭湯です。15年ほど前、「もっと多くの人に利用してもらいたい」と、まちの雰囲気に馴染む装いへとリニューアル。開店前から行列ができるほど、常連さんにも愛され続けています。
ほてい湯の自慢は、奈良では珍しい高純度軟水。ソープの泡立ちがよく、髪や肌の違いを実感する人も多いそうで、その評判を聞きつけて女性客も増えているのだとか。さらに、その軟水に温泉原液を混ぜ込んだ「人工温泉」も人気。下呂温泉や道後温泉など、数か月ごとにお湯が入れ替わり、奈良にいながら各地の名湯を楽しめます。また、近年はサウナを利用する男性客も増加中。ここでたくさんの人が整っているというわけですね。
旅人にも、常連さんにも愛される癒し処。今日もまた、「ええお湯でした」の声が聞こえてきそうです。
- |ほてい湯|
- 住所
- 奈良市肘塚町7
- 電話
- 0742-22-0793
- 時間
- 15:00〜0:00
- 休み
- 水曜
- 駐車場
- 21台
萩原酒店
レトロ空間で、今日も誰かと乾杯
私も知らなかった、少しディープな世界がここにありました。購入したお酒をその場で楽しめる「角打ち(かくうち)」ができる萩原酒店。100年以上にわたり、移りゆく京終の風景とともに歩んできた地域密着の酒店です。
「気軽にお酒を楽しんでもらえたら」そんな思いから始めた角打ちには、地元の常連さんはもちろん、近年はゲストハウスの増加に伴い、若い世代や外国からのお客様もちらほら。
「今日はどんな出会いがあるんやろうって、それが楽しみなんです」そう話すのは、ここに嫁いで60年以上になる玲子さん。今も現役で店頭に立ち、お客様を迎えています。
初めて訪れる人には少し勇気がいるかもしれません。でも、4代目ご夫妻とお母さんの玲子さんが温かく迎えてくれるので心配は無用。銭湯帰りに立ち寄って一杯。そのまま近くのカラオケスナックへーー。そんな京終らしい夜の過ごし方もあるそうです。
そして、もう一つ見逃せないのが、奥の倉庫へと続く長い屋内軌道です。長年ビールケースなどを運ぶために使われており、今では鉄道ファンが見学に訪れるほど貴重な存在。修理を重ねながら、現在も現役で活躍しています。まちの小さな酒店には、今日も誰かと乾杯できる風景が残されています。
- |萩原酒店|
- 住所
- 奈良市北京終町28
- 電話
- 0742-26-2323
- 時間
- 9:00~20:00(角打ちは17:00頃〜20:00頃)
- 休み
- 日曜
- 駐車場
- 無し
案内してくれた人
徳永 祐巳子(とくなが・ゆみこ)編集者/amu
(撮影:都甲ユウタ テキスト:徳永祐巳子)
※掲載の情報は2026年8月時点のものです。詳細は各施設・店舗にお問い合わせください
※掲載価格はすべて税込みです
※写真はすべてイメージです
この記事で紹介したお店の地図
- 井上本店(イゲタ醤油醸造元)
- 山田たこ焼き店
- ベーカリーショップ アンデス
- 朝日温泉
- ほてい湯
Google Mapの読み込みが1日の上限を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください
その他のエリアとモデルコース
- 奈良Go Round とは
- “もっと知りたい、楽しみたい”をキャッチフレーズに、
まだ深く知られていない奈良市の様々なエリアを紹介します。 
- もっと見る
- 高畑
- 神社仏閣に加え、⼤正・昭和初期に作家、芸術家ら が集った⽂化的な雰囲気を感じられるエリアです。

- もっと見る
- 佐保路
- 古刹や素敵なカフェ、少し⾜を延ばせばレトロな商店 街、古墳群があるなど様々な顔をもつエリアです。

- もっと見る
- 船橋通り商店街
- 昔ながらの⾵景に、レトロな建物を活かしたカフェ など新しいお店もやさしく溶け込む、ゆっくりと注⽬を集めるエリアです。

- もっと見る
- 帯解
- 歴史が息づく名所を巡りつつ、いちご農家の直売所や歴史ある酒蔵見学なども堪能できるエリアです。

- もっと見る
- 奈良の趣ある銭湯とグルメコース「人情味あふれる ローカルスポット巡り」
- 奈良市に残る貴重な銭湯2軒をはじめ、⾚レンガ倉庫のある醤油蔵、地域の⼈たちに愛されるたこ焼き店やパン屋さん、⾓打ちができる酒店を巡るコース。

- もっと見る






































































