奈良を味わう 大和伝統野菜

奈良の地で、人々の暮らしとともに長く育まれ続けてきた大和伝統野菜。
そこにあったのは、“食べる人の笑顔”でした。
野菜に込められた想いをたどりながら、奈良の食文化を味わってみませんか。


〈メイン写真〉

 (手前左から)味間いも、大和いも、片平あかね、歌姫だいこん、今市かぶなど、

 瑞々しく味が濃い大和伝統野菜が勢揃い。農家レストラン「清澄の里 粟(きよすみのさと あわ)」にて

奈良の風土が育む伝統野菜

  • 大和丸なす…5月から9月に最盛期を迎える大和丸なす。 丸々とした見た目と艶がとてもきれいで、「黒紫の宝石」と呼ばれることもある。  (写真提供:清澄の里 粟)
  • 片平あかね…色彩豊かで、姿形が個性的な大和伝統野菜の中でも、鮮やかな赤色で目を引く片平あかね。 山添村片平地区伝統の蕪(かぶ)で、独特の風味と程よい歯ごたえが特徴。

日本各地に見られる、その土地の風土や人々の営みの中で育まれてきた伝統野菜。盆地特有の寒暖差と山々に囲まれた自然をもつ奈良にも、古くから栽培されてきた「大和伝統野菜」が存在します。もとは外来種だった野菜の種が地域の農家により大切につながれ、長い年月をかけて奈良ならではの野菜(=在来品種)として受け継がれてきたのです。同じ種類の野菜でも、産地が変われば、名前や形、その風味も少しずつ異なります。大和伝統野菜は、そうした違いがよく分かる野菜です。


かつては自家消費を中心に親しまれてきた大和伝統野菜も、近年では飲食店や直売所で味わえる機会が増えてきました。食材を通して地域の歴史や文化に触れる旅「ガストロノミーツーリズム」が注目される中、大和伝統野菜もまた、奈良の食文化をひもとく存在として位置づけられています。そんな大和伝統野菜の魅力について、その普及に25年以上携わってきた三浦さんに話を伺いました。

《教えて!大和伝統野菜のこと》三浦さんに聞きました

  • 今市かぶや歌姫だいこんなど、希少な大和伝統野菜を慈しみながら育てる三浦さん。無農薬の畑で元気な野菜と会話を交わすのが日課
  • 奈良市南東部の山間に、「清澄の里」と呼ばれる自然豊かなエリアが広がる。そこで、 農家レストラン「清澄の里 粟」を運営する三浦さんの畑では、大和伝統野菜をはじめ、 年間を通して国内外の野菜約150種類が栽培されている
  • 農家レストラン「清澄の里 粟」の外観
  • お話を伺った三浦雅之さん・陽子さん夫妻
Profile
三浦 雅之(みうらまさゆき)
奈良市の中山間地・高樋(たかひ)町で、奈良県の在来作物の調査研究や栽培保存に取り組む。「清澄の里 粟」を運営。

Q 魅力について教えてください

A 大和伝統野菜を作り続ける理由を農家の方に尋ねると、多くの方が「おいしいから」「家族が喜んでくれるから」と答えます。つまり大和伝統野菜は、売るためだけではなく、食べる人の好みや暮らしを大切にして育てられてきた野菜だということです。家族や身内が口にする場面を思い浮かべながら、愛情や思いやりとともに育てられてきた。そのような背景から、私たちは大和伝統野菜を「家族野菜」と呼んでいます。それこそが、大和伝統野菜の大きな魅力です。


Q おすすめの楽しみ方は?

A 地域に適応してきた大和伝統野菜は、風味や形、色合いがとても個性的です。緑や紫、白など多様な色彩をもち、ビタミンやミネラルといった栄養素も多く含んでいます。細長い姿や、輪切りにしたときの丸い断面が「家庭円満」を連想させることから、正月の雑煮に使われてきた祝(いわい)だいこんなど、形そのものが食文化に生かされてきた野菜もあります。このように、見た目や成り立ちに目を向けながら味わう、という楽しみ方ができます。


また、近年では、片平あかねが焼き野菜として食べられたり、千筋みずながイタリアンのサラダに使われたりと、和食だけにとどまらず用途も広がっています。その野菜がもつ魅力を、それぞれの料理で味わってもらえたらうれしいですね。
                                 

    

ご存じですか? 奈良県が認定する“ブランド野菜”

奈良県では、県の特産品としてアピールできる野菜を「大和野菜」の名でブランド認定しています。地域の歴史や文化を受け継いだ野菜で、2026年現在25品目が登録されており、戦前から奈良県内で生産され、味や香りなどに特徴をもつ「大和の伝統野菜」20品目と、栽培や収穫出荷に手間をかけて栄養やおいしさを増した野菜やオリジナル野菜などの「大和のこだわり野菜」5品目で構成されています。


[大和の伝統野菜]大和まな/千筋みずな/宇陀金ごぼう/ひもとうがらし/軟白ずいき/大和いも/祝だいこん/結崎ネブカ/小しょうが/花みょうが/大和きくな/紫とうがらし/黄金まくわ/片平あかね/大和三尺きゅうり/大和丸なす/下北春まな/筒井れんこん/味間いも/黒滝白きゅうり
[大和のこだわり野菜]大和ふとねぎ/香りごぼう/半白きゅうり/大和寒熟ほうれん草/朝採り野菜

個性あふれる「大和伝統野菜」図鑑

奈良の風土と歴史に根ざした伝統野菜。その形や色、味わいはさまざまです。奈良の食卓に四季折々の彩りを添える大和伝統野菜の顔ぶれを眺めてみましょう。

イラスト:西原 楓

  • このページで紹介している伝統野菜の主な産地

奈良市内では、大和まなや大和きくな、大和丸なすなどを生産。宇陀市では宇陀金ごぼう、川西町では結崎ネブカ、御所市や天理市では大和いもが栽培されています。

大和丸なす(やまとまるなす)

  • ツヤのある紫黒色で美しい丸型が目印

肉質が締まっていて煮崩れしにくいため、煮物や天ぷらといった調理法がおすすめです。「がく」がピンとしていて、張りと光沢のあるものが新鮮な目印。2025年10月に行われた日米首脳会談後の昼食会で「大和丸なす」を使った料理がふるまわれたことも話題となりました。


[旬]春・夏

[産地]奈良市、大和郡山市 ほか


大和丸なすを使ったレシピはこちら!

黄金まくわ(おうごんまくわ)

  • 「マッカ」と呼ばれる奈良のまくわうり

奈良時代から庶民の間でも食べられていたことが知られる「まくわうり」の一種。美しい黄金色の果皮が特徴。シャキッとした口当たりとほのかな甘み、素朴でさわやかな風味が人気で、メロンのように切って生で食べるのが一般的。お盆のお供え物として使われます。


[旬]

[産地]県内全域

軟白ずいき(なんぱくずいき)

  • 煮びたしに最適な希少食材
アクの少ないさといもの芋茎(ずいき)を、草丈の低いうちから新聞紙などで包み、光に当てないように白く柔らかく栽培。生産量が極めて少なく、料亭などで高級食材として人気。上品で淡白な味わいです。


[旬]

[産地]奈良市

ひもとうがらし

  • 皮が柔らかい甘味種のとうがらし
ひものように細くて長い形状と、辛味が少なくしっかりとした食感が特徴。熱を通すと甘味が増します。ししとうと比べて、ビタミンCや食物繊維、βカロテンが豊富で、天ぷらやつくだ煮などの和食以外に、近年ではイタリアンやフレンチなどでも幅広く使われる人気の食材です。


[旬]

[産地]県内全域

大和三尺きゅうり(やまとさんじゃくきゅうり)

  •  奈良漬専用の貴重な長型品種
明治後期に県内で交配育種された品種で、大和高原一帯で昭和40年代まで栽培。現在は、しっかりとした表皮と優れた歯ごたえを生かし、奈良漬用として契約栽培されています。長さ40〜50cmの長型品種で、果色は淡緑色、歯切れの良い食感と柔らかい皮が特徴です。


[旬]

[産地]県内全域

生産地の名前がついた伝統野菜をチェック!

戦前から、地域の農家の手で種が守られ、育て続けられてきた大和伝統野菜。中には生産地の名前が付いた野菜もあり、その土地との結びつきがうかがえます。

味間いも(田原本町味間地区)
今市かぶ(奈良市今市町)
宇陀金ごぼう(宇陀市)

歌姫だいこん(奈良市歌姫町)

片平あかね(山添村片平地区)
黒滝白きゅうり(黒滝村)
下北春まな(下北山村)
筒井れんこん(大和郡山市筒井地区)
野川きゅうり(野迫川村野川地区)
結崎ネブカ(川西町結崎地区)

※ 50音順
生産地の名前がついた伝統野菜をチェック!

大和いも(やまといも)

  • 強い粘りはとろろ汁にも
江戸時代後期には県内で栽培されていたと伝わります。戦前には関西の市場で名声を得ていました。球形で表皮が黒く、肉質がきめ細かで引き締まっており、ねばりが強いのが特徴。薯蕷(じょうよ)饅頭などの和菓子の原料や練り製品のつなぎにも使われています。


[旬]秋・冬

[産地]御所市、天理市 ほか

宇陀金ごぼう(うだきんごぼう)

  • 香り高く金のような輝き
明治初期から「大和ごぼう」や「宇陀ごぼう」として関西の市場で人気に。肉質が柔らかく、ごぼう特有の香り高さが特徴。鉱物を多く含む土壌で育つため、付着した雲母(うんも)がキラキラと光り、金粉をまぶしたように輝く。縁起物として正月のおせちに珍重されます。


[旬]秋・冬

[産地]宇陀市

大和きくな(やまときくな)

  • クセが少なく生食も可能
一般的な菊菜(きくな)と比較して柔らかい食感を持ちます。菊に似た独特の香りが特徴で、寒さとともに風味が増すため、鍋やすき焼きに重宝。アクが少なく、生で食べられるので、サラダに混ぜるとアクセントになります。菊菜は関東では春菊(しゅんぎく)と呼ばれます。


[旬]秋・冬

[産地]県内全域

結崎ネブカ(ゆうざきねぶか)

  • 濃厚な甘みの伝説の葉ねぎ

観世流能の発祥地・川西町結崎地区では、室町時代に翁の能面と一緒に天から降ってきたねぎを植え、それが結崎ネブカになったという伝説が残ります。葉が柔らかく折れやすいため、流通が少なく「幻のねぎ」と呼ばれることも。煮炊きすると粘りのあるトロッとした甘みが広がります。


[旬]

[産地]川西町(旧・結崎村)

祝だいこん(いわいだいこん)

  • 縁起物とされる雑煮の具材
古くから奈良をはじめ関西で親しまれている、直径3cmほどの太さの雑煮用の大根。関西では雑煮の食材は「角が立たず円満に過ごせるように」という縁起をかつぎ、輪切りで使われるため、雑煮専用に細い大根が作られたと言われています。年末には欠かせない食材です。


[旬]

[産地]奈良市、葛城市、宇陀市 ほか

大和まな(やまとまな)

  • 大根の葉に似た濃緑色が特徴

アブラナ科のツケナ(漬け菜)の一種で、奈良を代表する伝統野菜のひとつ。油と相性が良く、炒め物や漬物、おひたし、煮物など、多彩な調理方法で楽しめます。周年栽培されるようになり、時季ごとに辛味や苦味、旨味、甘味などの違いが楽しめるのも、大きな特徴です。


[旬]

[産地]県内全域


大和まなを使ったレシピはこちら!

※掲載している野菜は、大和伝統野菜の一部を抜粋したものです。イラストは一例です。

※旬の表記は目安です。産地や品種により異なります。

※当記事は観光情報雑誌『ならり』vol.40からの抜粋です。掲載内容は、2026年2月現在のものです。

大和伝統野菜のカンタンレシピ

生まれも育ちも奈良市。料理好きな奈良市観光協会職員の新子(あたらし)さんが、手軽でおいしいレシピを紹介します。

レシピ① 大和丸なすの豚バラ巻き

材料(2人前)
●大和丸なす 1個
●豚バラ肉(薄切り) 16枚
★酒 大さじ2
★醤油 大さじ2
★砂糖 大さじ1
★みりん 大さじ1

作り方

①なすはヘタを取り、縦8等分に切る。片栗粉(大さじ1)を全体にまぶす。

②豚バラ肉を2枚広げて並べ、塩、こしょうで下味をして、なすにしっかりと巻きつける。

③フライパンに並べて全面に焼き色がついたら、蓋をして弱火で7分蒸し焼きにする。

④蓋をとり、余分な油をキッチンペーパーでふきとる。

⑤★を合わせて入れ、照りが出るまで調味料を煮絡める。お好みで細ねぎと白ごまをちらす。

レシピ② 大和まなとじゃこのペペロンチーノ

材料(2人前)
●大和まな 1袋(200〜250g)
●ちりめんじゃこ 大さじ3
●スパゲッティ(1.4mm推奨) 200g
●にんにく(スライス) 2かけ
●輪切り唐辛子 2本分
●オリーブオイル 大さじ2
●水 500ml

作り方

①大和まなは3㎝幅に切る。

②フライパンにオリーブオイル、にんにく、唐辛子を入れ弱火で香りが立つまで炒める。

③水・スパゲッティ・残りの食材を入れ、時々混ぜながら中火で水分がなくなるまで火にかける。

※目安はパッケージの表示時間+2〜3分

④塩で味をととのえる。

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