季節を代表する 奈良のおすすめ和菓子

一年を通じて社寺の神事や行事が多い奈良。

年中行事と関わりのある季節を代表する和菓子をイラストで紹介します。


イラスト:西原 楓

〈春の和菓子〉3月~5月

  • 桜餅
  • 柏餅
  • ちまき

桜餅

塩漬けした桜の葉で餅を巻いた菓子。

薄皮の生地で餡をくるむ関東風に対し、関西ではつぶつぶとした道明寺粉の餅で餡を包みます。


柏餅

子孫繁栄を願い、端午の節句に食べられるようになったのは江戸時代からと伝わります。


ちまき

もち米や米粉などで作った餅を茅(ちがや)や笹で包んで蒸した菓子。

関西では端午の節句などに食べます。

期間・行事限定で登場!〈春〉

  • 南無観椿/寧楽菓⼦司  中⻄与三郎
  • 開山良弁椿/御菓⼦司 鶴屋徳満※花芯は黄身餡を使用


〈期間限定 椿菓子〉


東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)に合わせて奈良市内の様々な和菓子店で、2月上旬~3月中旬頃に、仏前を荘厳するお供えの造花を模した生菓子が作られます。

  • 西大寺餅


〈行事限定 西大寺餅〉


「西大寺の大茶盛式」に出されるお茶菓子。年に2回、茶会の日に合わせ期間限定で「御菓⼦司 千代乃舎⽵村」にて購入できます(予約可)。





関連行事〈春〉

東大寺二月堂 修二会(お水取り)
3月1日〜14日1270年以上絶えることなく続く行事で、令和7(2025)年で1274回目。二月堂の本尊・十一面観世音菩薩に罪を懺悔し、国家安泰と万民豊楽などを祈ります。行を勤める練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりである「お松明」は圧巻です。
東大寺二月堂 修二会(お水取り)
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西大寺 春の大茶盛式
鎌倉時代から催されている茶儀。春は毎年4月の第2日曜日とその前日の土曜日に実施されています。高僧、叡尊上人が正月の修正会の結願のお礼として1月16日に八幡神社に献茶をされ、その折に参拝の民衆にもお茶を振る舞ったことに始まります。
西大寺 春の大茶盛式
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林神社(漢國神社内) 饅頭祭
菓祖神(かそじん)・林浄因命(りんじょういんのみこと)の偉業を讃えるとともに、菓子業界の繁栄を祈願する饅頭まつりが執り行われます。全国からたくさんの銘菓が献上され、神事の後はお茶と振る舞いなども行われます。
林神社(漢國神社内) 饅頭祭
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〈夏の和菓子〉6月~9月

  • かき氷
  • わらび餅
  • 葛餅(くずもち)

かき氷

清少納言の随筆『枕草子』にも「削り氷」として登場。

平安時代より1000年以上の歴史がある氷菓。現在の奈良では、季節を問わず人気。


わらび餅

わらびの根から採れるわらび粉の産地として有名な奈良が発祥とされます。


葛餅(くずもち)

小麦でんぷんが主原料の関東のくず餅とは別物。

吉野産の葛は「吉野葛」として人気です。

〈秋の和菓子〉9月~11月

  • 月見団子
  • 火打焼(ひうちやき)
  • 亥(い)の子餅

月見団子

豊作を願うお供えの団子は、満月を表したもので、江戸時代に広まりました。


火打焼(ひうちやき)

春日大社に縁がある唐菓子の「ぶと」が原型と伝わる奈良の名物菓子。

求肥(ぎゅうひ)餅の表面を焼き清めたものです。


亥(い)の子餅

平安時代の宮中儀式に由来。

冬に向けて釜を炉に据える茶道の「炉開き」に欠かせないお菓子です。





〈期間限定〉

中秋に合わせて、奈良市内の多くの店舗でお月見団子が作られます。

関連行事〈秋〉

采女神社(猿沢池畔) 采女祭
中秋の名月に行われる春日大社末社・采女神社の例祭。
采女神社(猿沢池畔) 采女祭
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特設サイト|奈良の秋のお祭り「采女祭」
毎年中秋の名月の日に行われる、例祭「采女祭」(うねめまつり)。お稚児さん募集や、ツアーなど行事詳細をお伝えします。毎年8月頃に情報更新します。
特設サイト|奈良の秋のお祭り「采女祭」
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〈冬の和菓子〉12月~2月

  • いちご大福
  • うぐいす餅
  • ぜんざい

いちご大福

いちごの果実が入った大福餅。

昭和の末頃から登場した現代和菓子の代表格です。


うぐいす餅

安土桃山時代の大和国(奈良)発祥と伝わります。

うぐいす粉(青大豆きな粉)が特徴です。


ぜんざい 

平安期に出雲地方から伝わったお供え餅の「神在餅(じんざいもち)」がルーツとされます。

期間・行事限定で登場!〈冬〉


〈期間限定 小折(こおり)饅頭〉


平安時代から「春日若宮おん祭」のお供えに使われていた「小折饅頭」が150年ぶりに復活。期間限定で「御菓子司 鶴屋徳満」の三条店に登場します。


〈行事限定 大安寺やきもち〉


その昔、林浄因が「大安寺」に奉納した饅頭の味を、「寧楽菓⼦司 中⻄与三郎」が再現。1月と6月の行事の日のみ、境内の屋台で販売されます。







関連行事〈冬〉

春日大社 春日若宮おん祭
900年近く途切れることなく続く、春日大社摂社・若宮の例祭。古くから日本に伝わる様々な芸能が奉納されます。
春日大社 春日若宮おん祭
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唐招提寺 修正会/餅談義
修正会は、新しい年の平安と五穀豊穣を祈る護摩供。護摩作法の後に鏡餅をお供えした人の名を読み上げ、全国の餅の名をユーモラスに讃嘆する餅談義が行われます。※餅談義は3日のみ
唐招提寺 修正会/餅談義
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大安寺 光仁会(癌封じ笹酒祭り)
癌封じの祈祷を行い、健康を祈願する行事。
大安寺 光仁会(癌封じ笹酒祭り)
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INTERVIEW -宮司さんに聞きました-
丸く柔らかな饅頭で和やかな世に

  • 漢國神社内にある「林神社」は、国内唯一の饅頭の社(写真提供:漢國神社・林神社)
  • 和菓子を中心に、全国の菓子業界から奉納された品々が並ぶ(写真提供:漢國神社・林神社)
  • 林浄因が中国に帰国した4月19日を命日として行われる饅頭祭(例大祭)では、菓子業界の繁栄を祈念。奈良の銘菓の販売も行われる(写真提供:漢國神社・林神社)
  • 林浄因が結婚の際、子孫繁栄を願って紅白饅頭を埋めた大きな丸い石が「饅頭塚」として林神社の裏に残されている(写真提供:漢國神社・林神社)

1349年、中国留学から帰朝した禅僧・龍山徳見(りゅうざんとっけん)に伴われて、中国から来朝した林浄因。

都の政治争いに巻き込まれたくなかったのか、京都ではなく奈良に居を構え、師匠を訪れるときの手土産として紅白の薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)を作りました。


肉の代わりに小豆を使ったのは、縁起の良い素材で薬膳にも使われていたからでしょう。1692(元禄5)年に行われた大仏さまの開眼供養の頃には、全国から来た参拝者のほとんどがこの饅頭を食べたといわれています。


漢國神社(かんごうじんじゃ)は、今から約1400年前の593(推古元)年、大物主命(おおものぬしのみこと)をおまつりしたのが始まりとされています。林浄因が向かいに家を建てたご縁により、後にお饅頭の神様として林浄因をまつりました。

今では、北は北海道から南は九州まで、和洋を問わずお菓子業界の方々がお詣りされます。

毎年4月19日の例大祭「饅頭祭」では、当日限定の「復刻 奈良饅頭」も発売され、好評をいただいています。


甘くてほっとする饅頭を食べて皆様が平和な気持ちになっていただけるよう、丸く柔らかな形を思い浮かべながら「和やかな世になりますように」と、祝詞を上げています。


※薯蕷饅頭=すりおろした大和芋や山芋に、砂糖と米粉を混ぜた生地で餡を包み蒸した饅頭


 Profile 


宮司 梅木 春興(うめき はるおき)さん


1947年、奈良市生まれ。奈良文化女子短期大学付属高等学校(現奈良文化高等学校)の教諭を経て、漢國神社・林神社の宮司に。

シンプルな饅頭はもちろん、最近はかりんとう饅頭などアレンジしたものも好み。



※店舗・商品情報は変更となる場合があります。最新の情報は、各店舗のウェブサイトやSNSをご確認ください

※当記事は観光情報誌『ならり』vol.38からの抜粋です。掲載内容は2025年2月現在のものです



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